第4回 卵
2019年2月26日 精神科
薬の副作用の詳しい説明は
5分ほどで終わった。
続いて患者が
医師に最も言われたくないセリフが来た。
「前回の診察から、変化はありますか?」
この質問への回答が
T先生との関係を決める。
緊張の一瞬である。
だが問題はない。
診察室に入る前に
T先生への応えは、用意してあった。
「”うつ消しごはん”を参考に食生活を変えました」
「何をされましたか?」
「牛肉や豚肉は消化しづらいので、
いきなり増やせません。
だから卵を食べる量を増やしました。」
「卵は消化しやすい食材で
タンパク質・鉄分だけでなく
身体に必要な栄養素がたっぷり含まれている」
「これまで言われていた
”コレステロール値が上がるから卵は1日1個まで”
が間違いだと書いてあったので
毎日2~3個の卵を食べました」
「すぐに効果が出て、深く眠れるようになりました」
T先生の顔に、満面の笑みが浮かんだ。
私は心の中でガッツポーズをした。
医師と患者の関係、実は上司と部下の関係に近い。
医師だって人間だ。
患者の好き、嫌いはある。
医師が最も重視するのは、患者の行動だ。
『自分が伝えた改善方法を
患者がきちんと実行しているか?』
うそを言っても無駄だ。
ベテランの医師なら、一瞬で見抜く。
医師のアドバイスを無視する
以前と変わらない、生活を続ける
診察室ではうそをつく
医師のアドバイスを実行する
生活の習慣を変える
行動の結果を、素直に言う
どちらの患者を
医師が良くなってほしいと
心から強く願うのか
考えるまでもない。
医師の信頼を得ることができれば
本にまだ載っていないような
貴重なアドバイスがもらえる。
素晴らしい情報を、つかむことができるのだ。
脳内シュミレーション通り
T先生の信頼を得ることができた。
私も、T先生に満面の笑みを返した。
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