歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

『病院スクランブル』 第11回 身勝手

第11回 身勝手

 

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2019年2月27日 免疫内科

 

診察までの

待ち時間は15分だった。

 

なぜ、時間がほしい時に限って

早く呼ばれるのだろう

 

1時間後でよかったのに

 

普段は

3分も待ちたくないと

思っているのに

 

入りづらい時は

1時間以上かかれと

願ってしまう

 

患者さんを待たせまいと

頑張ってくれている人たちを

思い出した。

 

自分の身勝手さに

罪悪感を感じた。



「失礼します」

 

いつも通り

診察室のドアを開ける。

 

U先生は笑みを浮かべている。

人の良さが伝わってくる

穏やかな笑みだ。

 

この優しくまじめな先生に

残酷な事実を伝えなければいけない。

 

胃がキリキリしそうだ。

泣きたい気持ちになってきた。

 

U先生は

不思議そうな顔をしている。

 

時間を稼ぐために

荷物から用意した資料3種類をとりだした。

そして、考えるのをやめた。

 

私は開き直った。

 

精神科医T先生に言われた通り

そのまま伝えよう

 

赤ペンの書き込みがある

血液検査の結果

 

調剤薬局でもらった

鉄分とビタミンB群の錠剤の説明書

 

書籍”うつ消しごはん”の

販売ページのコピー

 

3種類の資料を

U先生に見せながら伝えた。

 

営業職時代の人格が

帰ってきたのを感じた。

 

生命保険の説明を

加入者にお伝えするように

U先生に細かい点まで伝えた。

 

別人格に切り替わったせいか

心がとても静かだ。

 

多重人格であることを

ありがたいと思ってしまった。

 

自分の身勝手さを

たった1時間で

2度も実感するとは

 

焦っているのに、笑えてきた。

 

U先生の表情が

固まっているのに

 

診察室の空気も

重くなっているのに

 

笑える自分が

無性におかしかった。



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