第13回 線維筋痛症
2019年2月27日 免疫内科
U先生のしょんぼりは続いている。
こういうときは、あれだ。
助けを求める
医師になる人は
『苦しんでいる人を助けたい』
と思っている人が多い。
だからこそ
患者に頼られると
一生懸命になってくれる。
逆に言うと
落ち込んでいても
頼られれば、意識が逸れる。
私は考えておいた
質問をした。
「これまで飲んでいた
アレルギー、痛み止め、胃薬、ぜんそくの薬
は飲み続けても大丈夫でしょうか?」
「鉄分やビタミンB群の錠剤を飲み
食事の内容を変えます」
「これからの生活で
気をつけることはありますか?」
「これまでの薬は飲み続けても
問題ありませんよ。生活については」
U先生の表情が
ベテラン医師に戻った。
ホッとした。
必要だったとはいえ
自分の発言のせいで落ち込まれると
罪悪感がぬぐえない。
特にU先生は
38年間、仮病を疑われ続けた
私の病気を見つけてくれた先生だ。
『あなたは線維筋痛症です』
宣告された日の喜びを
忘れる日はないだろう。
満面の笑顔に
戸惑っていたU先生
無理もない。
絶望する患者を
はげまそうと思っていたら
歓喜され感謝された
U先生、驚かせて申し訳ない。
変人で申し訳ない。
嬉しさを隠しきれなかったんだ
高熱で死にかけても
寝返りができないほど
体中が痛くても
信じてもらえない
それどころか
病院で仮病を疑われ
迷惑そうな顔をされる
病院恐怖症になるほど
嫌だった時間が終わったんだ
嬉しくて
たまらなかったんだ
身体の痛みが
一生続く可能性が高くても
鎮痛剤を飲んででも
痛みを耐えて動かなければ
寝たきりに戻ってしまうとしても
病名がわかり
改善する方法がある
完治する可能性がある
それがわかっただけでも
嬉しかったんだ
あきらめの時間を
終わらせてくれたU先生の
沈んだ表情なんて見たくはない。
元気になったU先生を
微笑ましく見守った。
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