第28回 M先生
2019年3月1日 診療所
M先生に免疫内科と精神科で言われたことを、資料を交えて伝えた。”線維筋痛症”という免疫異常で全身が痛む症状、”解離性障害”という多重人格と記憶を失う障害について細かく伝えた。
「階段や車道側でばかり、意識が飛ぶのはおかしいなと感じていましたが、別人格の意思だとは思ってもみませんでした」
「体中が痛いのも、意識が無くなるのも、完治する保証はなく治療も何年もかかるそうです」
「だろうねぇ」
M先生がすごいな、と思うのはこういうところだ。普通の患者なら自殺を考える状況を伝えても、深刻な顔をしない。普段聞かない病名を伝えても、驚かない。
だから話しやすいのだ。
医師に暗い顔をされると、こっちも暗くなる。逆に明るすぎると「こっちの不安がわかっているのか」と腹が立ってくる。身勝手だと自分でも思うが、しんどいときは冷静になりづらい。
M先生は穏やかな表情と明るい雰囲気を、常に保っている。そして、こちらの質問に丁寧に答えてくれる。私の知識レベルに合わせて、話してくれるのだ。知っていることをくどくど説明しない。知らないことは例えを使って、教えてくれる。
M先生の患者でよかったと、いつも思う。
有難いことだ。
M先生の雑談のような診察は、5分ほどで終わった。治療方針についても相談し、1ヶ月後までの生活の仕方も決まった。
薬を受け取り、診療所を出た。私の気持ちを写したかのような、見事な青空だ。風もどこか心地よい。
春が近付いていると、感じた。
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