第37回 推薦
2019年3月2日 京都天狼院
部屋の隅にある、本棚に近づいた。そこには30冊ぐらいの本が入っていた。誰の本棚なのか、それも手書きで書いてあった。
知っている人だ
しかも本人が店内にいる
私は横目で確認した。ちょうど、手が空いているようだ。私は、質問した。
「どの本も面白そうですね。どれが特にお勧めですか?」
「この本は、マンガですけど」
「何の問題もありません。マンガは大好きです」
「市川春子さんの『虫と歌』、好みがわかれる内容ですが私は大好きなんですよ」
「ぜひ読ませてください」
輝かしい笑顔で、マンガを差し出された。正直、驚きだった。30冊以上の本があるのに、その中でマンガはちょっとしかなかった。なのに、推薦してくるとは……
そういう意外な展開は好物だ
私も、満面の笑顔で受け取った。
そして、泣いた
こらえきれずに、泣いた
まさか文章の勉強会前に泣かされるとは、思ってもみなかった。どの話も涙線にダメージを与えてくれたが”日下兄弟”では耐えられなかった。どの話も不思議と人の感情が織りなす幻想の世界だった。
アニメ『蟲師』観た後のような、切なさと心の温かさを感じた。そんな感想を、ご本人に感謝と共に伝えた。とても喜ばれた。その気持ちは、痛いほどわかった。
自分が大好きな本に感動してくれる人
本好きな人に、出会うだけでも嬉しい。本の趣味が合うならば、祝杯をあげたくなる。特に珍味のような、一般受けしない本で話が合うと「同士!」と握手したくなる。
私が行く先々で本を探してしまうのも、まだ見ぬ”同士”に出会うためかもしれない。『虫と歌』の素晴らしさを語り合いながら、ふと思った。
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