本の強みは理想の世界?
2019年4月23日 自宅
今の時代、物語を楽しむ方法はたくさんある。TVや映画に頼らなくても、インターネット上に動画があふれている。病人を描写するシーン、昔は本が枕元にあった。今はノートパソコンやスマートフォンだ。実際に本を読むのは、動画を視聴するよりも体力がいる。入院時はTV視聴と読書、両方とも決められた時間しか楽しめなかった。そして、読書をしていい時間の方が短かった。疲れてはいけない病気に、長時間の読書は厳禁である。体力が69歳の父よりないのに、私はなぜ読書をするのか。それは本の世界でしか味わえないものがあるからだ。
本を読む行為は、想像力を使う。その力を発揮しようとすると、気力と体力を捧げる必要がある。つまり、疲れる。読書に慣れない人は、数ページを読んだだけでぐったりしたり、頭が痛いと挫折する。これはイメージするために頭をフル回転しているからだ。あまりイメージをしなくていい動画とは、疲労度が大きく違う。
動画と比べて、読書は大幅に体力を消耗する。そこまでエネルギーを使ってまで、読書をする価値はあるのか。私はあると断言する。頭が鍛えられるとか、想像力が上がるとかいう実利があるからではない。本を構成する文章でしか、表現できないものがあるからだ。
すべてが理想の世界
これだけは、自分の想像の中にしか存在しない。出会う人も、今いる場所も、自分自身も現実の世界では理想から外れる。世界トップレベルが集う映画を観たとしても、登場人物や描かれる背景が理想そのまま、なんてことはまずない。出会えた人は相当に幸運である。
だが、本の世界は違う。与えられているのは言葉だけである。どんな顔か、性格か。自分の立場は、住んでいる場所は。歩む先と、その結果も、すべて自分が思うままだ。
絵や音が入ってしまえば、理想は崩れてしまう。小説やマンガが、アニメ化や実写化など動画になって「イメージが違う」とがっかりしたことはないだろうか。この落胆してしまう感情も、理想のイメージと動画のズレから起こっている。
想像することに慣れると、実用書ですら推理小説になる。「この結論は、どんなデータから出したのだろう?」「どんな人生を歩めば、この本を出す人になるのだろう?」「どんな結果が欲しくて、この本を書いたのだろう?」シャーロック・ホームズ氏が事件の真実を探る物語を楽しむように、実用書も味わえる。行間を読むなんて言葉で考えるから、ワトソン君のように混乱する。そんな難しく考えなくてもいい。「作者が最も伝えたいことはなんだろう?」この推理だけで十分だ。
弱みだけのモノなぞ、この世に存在しない。どんなモノにも強みはある。本の強みは、理想の世界への入り口だということだ。どこでもドアのように、ワープ装置のように、両手に収まるほど小さいけれど、広大な世界へ誘ってくれる。それが、本の素晴らしさだ。
本の世界に、限界はない。
<<2019年4月24日に続く>>
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