探しもの現象が倒せない
2019年4月28日 自宅
思い出せない。メモ帳には『92度のかたむき』と書いてある。頭の引き出しからは「倒れない?」という薄ぼんやりしたキーワードが出てくるだけだ。探しもの現象に陥ってしまった。探している時は見つからず、後から見つかるパターンだ。こんな時は自然に思い出すまで、放っておく。どうせ考えても、記憶の空白は埋まらないのだから。
メモをとるべきか、とらないべきか。この論争は、きのこたけのこ戦争並みに終わる気配を見せない。書くから覚える派、書くから安心して忘れる派、一時的に片方が優勢になることはあっても完勝はない。近頃は音声録音でメモる派も躍進している。技術の進歩を感じる。
私はどこの派閥にも属さない、無所属である。メモらないことも、メモることもある。紙に書く。スマホやPCに打ち込む。メモる対象さえバラバラだ。性格が出ているなと、苦笑してしまう。だからこそ、起こってしまうのかもしれない。『メモったのに思い出せない』、探しもの現象が。
ハッキリ言おう。防ぐ方法はない。どれだけ細かく、丁寧に、イラスト付きで書いても忘れる時は忘れる。イラストが下手なせいかもしれないが、それを差っ引いても忘れないのは不可能だ。いろいろ試してみたが、無理だった。動画に残しても叶わなかった。
発想を切り替えた。「忘れたのは、忘れる程度のものなのだ」負け惜しみだが、ある真理を突いている気はする。人生が変わったきっかけのような出来事やトラウマになるほど強烈な体験は、忘れようとしても忘れられない。私のように記憶障害になれば話は別だが、これだって厳密には忘れているのとは違う。心が耐えられないほど重い記憶だから防衛本能が働き、魔王を封印するように閉じ込めているだけだ。消えたわけではない。
記憶というのは不思議なもので、本当に必要な時はひょっこり思い出す。前触れなんて、なにもない。「なんでそんなところにあるの?」探しものが見つかるときと同じく、予想外のタイミングで現れる。「探した労力はなんだったのか?」がっくりするところまで同じである。
ほとんどのメモは、思い出すのを待つことができる。忘れ去っても、別の何かが浮かぶ。だが忘れちゃまずいものがある。仕事のアポイントや年1回の試験など、予定が決まっているものだ。よりにもよって付き合いたてのカップルが相手の誕生日を忘れたとしたら、修羅場は避けられない。予定の振替はできたとしても、信頼は失われる。取り戻すまでの苦難を想像すると、忘れない対策をするのが賢明だ。
絶対に忘れちゃまずい予定の場合、私はスケジュール帳、スマホ、PCに残している。そして寝る前の翌日チェック、寝起きの当日チェックの時に1ヶ月の予定を軽く眺めている。予定が新たに入る時や変更する時も、1ヶ月分の予定を鳥が空から地上を見下ろすように目を通す。英単語の覚え方の応用だ。忘れる前に記憶を上書きする。忘れてしまったら覚え直す。反復記憶で、探しもの現象を乗り越えている。
完全記憶の持ち主以外、忘れるのは日常の風物詩だ。無くそうとして無くなるならば、記憶法の本が古代から現代までの間に途切れている。書店の学習コーナを一度見ただけでも、望みが叶う可能性がゆで卵の薄皮よりも儚いことを教えてくれる。忘れないなんて無駄な抵抗をして敗れるよりも、忘れることを前提に仕組みをつくる。少なくとも、約束を忘れて大事な人を悲しませるよりもマシな未来が待っている。
サングラスを探している友人に伝えた。
「かぶっている帽子に乗っている
黒い物体はなにかな?」
<<2019年4月29日に続く>>
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