歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

【病院スクランブル】偽りが通じるほど、1流は甘くない

偽りが通じるほど、1流は甘くない

 

2019年5月18日 会議室

 

今日は待ちに待った、何ヶ月も前から申し込んでいた勉強会がある。

 

「日本の伝統文化を取り入れた物語を描きたい」

「そのためには文化の土台となる、思想をつかみたい」

「いくつかあるが、禅は外せないよね」

 

最初は、京都のお寺に教えを請いに向かおうとしていた。そんな話をポロッとこぼしたら、「だったら私の師匠がいいわ」と日本史の専門家の方に紹介してもらった。言ってみるものである。

 

会場に入って、気づいた。明らかに場違いだ。衣装を見ただけでわかる。明らかに普段、出会うことのない人たちだ。私がワンカップ大関なら、ここに集まっている方々は大吟醸だ。TVで観たことがある人もいる。会場に置いてある本の著者もいらっしゃる。よかった、念の為にスーツで来てよかった。迷ったら正装は鉄板である。カバンに名刺入れも放り込んである。問題は欠片もない。切り替えにかかった時間は1分だった。

 

私には焦った時の最強ワードがある。

これがある限り、立ち直るのは汗が乾くより早い。

 

『生と死の差に比べれば、すべては些事(さじ)』

 

死線をさまよった日々を思い出せば、なんてことはない。ちょっと顔が湿気ったが、ハンカチで拭けば元通りである。だいたい今日のメインデッシュは禅の学びである。それ以外はハンバーグの付け合せ、ニンジングラッセだ。最前列が空いていたのでありがたく席を確保し、誘ってくれた方を探した。

 

講義が終わった。そのまま、食事会に参加している。なぜか正面に禅の教えを伝えてくださった先生、主賓が着席されている。わけがわからない。

 

講義中にノートをカリカリ書いていたのが良かったらしく、無事に仲間と認められた。気さくな人たちばかりで、食事会にも誘っていただけた。せっかくだから近くに行きなよと言われた。ホイホイうなずいたら、まさかの真正面である。緊張するからと譲られてしまった。流石に予想外にもほどがある。私は新参者で、周りの平均年齢は50歳を超えている。若輩者は近づくのもおこがましい。顔は笑みを保っているが、内心は冷や汗でプールができそうだ。さらに試練が襲う。

 

「せっかくの機会だから、なんでも質問してみたら?」

 

チョット待ってほしい。現在、食事会に参加している人は20人ぐらい存在する。その全員と初対面である。ネットで交流したことがある人も2人しかいない。この状況で主賓に話しかけろ、と。

 

お言葉に甘えて、ありがたく質問をぶつけた。

 

ここで引いては損である。チャンスが降ってきたら、迷わずゲット派だ。こんなこともあろうかと、質問は考えてきている。自己紹介後に今、最も行き詰まっている問題をぶつけた。

 

「どうすれば

 多くの人に届く文章が書けますか?」

 

「あんたはそのままでいい」

 

えっ、である。禅の先生曰く、私はコツコツ頑張っていれば届くらしい。今のまま、真っ直ぐ進めと激励された。心のつかえがフッと解けた。

 

私はどんな人の前でも、態度は変えない。言葉づかいや衣装などのTPOはわきまえるが、どこに参加する時も日常モードである。だって、無駄だからだ。経験豊富な人の前では仮初のお面なんぞスケスケだ。偽っても信用を落とすだけである。だいたい演技力を発揮するのは疲れる。女優になるのは、修羅場のときだけでお腹いっぱいだ。

 

今回も変わらない。そんな日常モードのままで、毎日励めばいいと微笑まれた。とても、とてもホッとした。

 

その後2時間ほど、多くの人と歓談した。名刺もいくらか減った。ハイライトは学校の先生といじめ問題で語り合い、結局は校長先生で決まると答えた時だ。意見交換中の先生の隣人に、スッと名刺を差し出された。こちらも名刺を渡しながら確認すると右上に校長の文字、軽くめまいがした。今日は心臓に悪い出来事が多すぎる。

 

心拍数がロックを奏でた、そんな1日だった。なんとか変顔を披露する前に、解散というゴールにたどり着いた。自宅への道を歩みながら、しみじみ振り返る。やっぱり基本路線はありのままがいい。どれだけ動揺しても、偽りがなければボロを出すことはない。それで嫌われても、死ぬわけじゃない。むしろ四六時中、ずっと演技を続けなきゃいけない場所にいるのは嫌だ。心身の健康のためにも、素で生きた方が息がしやすい。度胸がいくらかいるが、場数を踏めば慣れていく。この慣れは悪いパターンじゃない。本日、教わった講義でも語られていた。そのままでいいのだ。

 

器に合わせて

形を変えても

性質は変わらない。

 

水のような思想を禅という。

 

<<2019年5月19日に続く>>

 

超訳般若心経―“すべて”の悩みが小さく見えてくる (知的生きかた文庫)

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