歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

【歩くリトマス試験紙の反応記録】映画『引っ越し大名!』に組織改革を学ぶ

映画『引っ越し大名!』に組織改革を学ぶ

 

2019年8月31日 映画館

 

予告編で気になっていた『引っ越し大名!』、『刀剣乱舞』とコラボと聞いては行くしかない。いつもとは逆に映画狂の友人を引きずった。「急に決めるな」と文句を言われた。ちょっと待て、上映2時間前に誘う人に言われたくない。今回で身に沁みてくれるといいが。儚い期待だ。

 

予想外に心が重くなるシーンに驚いた。

 

タイトルも予告編もコミカルだ。だから、本編もギャグで駆け抜けると思った。駆け抜けるのは予想通りだったが、障害物のように心がズーンとするエピソードがいくつもあった。

 

「下っ端はつらいよ」

 

中間管理職もつらいが、階級が下のものはもっとつらい。ストレス発散に使われ、親友が有能すぎてプライドはボロボロ、おまけに厄介事を押しつけられる。そんな悲惨な状況から主人公の歩みが始まる。

 

ただ、この物語はトラウマを植えつけるような作品ではない。一昔前で言うならば、成り上がりものだ。最底辺の地位と評判から藩随一の家臣に成長していく。そのストーリーが組織改革の良い見本になっている。3つ上げると、仲間集め・お金・膿出しだ。

 

まずは仲間だ。組織改革は一人じゃできない。信用ができる仲間が必要だ。ここで大事なのが、能力よりも人格が優先される。『引っ越し大名!』では、親友という名の強い味方がいた。そのカリスマ性で仲間が続々と集まったのが大きい。

 

組織改革というのは今、おいしい立ち位置の人に邪魔される。いわゆる既得権益だ。しかも大抵の場合、強い権限を持っている。秘密がもれれば改革前に潰される。能力を優先するのは強い権限を握ってからだ。この段階になると秘密がもれても対処ができる。むしろ改革を成功させたいなら、もれた秘密を利用するぐらいの腹黒さがほしい。

 

次にお金だ。お金がなければ組織は動かない。侍だって”御恩と奉公”、御恩がなければ主君を見捨てる。

 

「元手ゼロで人を動かしたい?」

 

そんな甘い話はない。最近、定着してきたクラウドファンティングだって経費はかかっている。『引っ越し大名!』では主人公が大商人相手にプレゼンした。同じように、お金を投資してもらうには相手を納得させる仕組みづくりは外せない。

 

最後に膿出しだ。風呂場の栓がゆるいと水が貯まらないように、不正は弾き飛ばさないといつまで経っても資金は貯まらない。組織の安定はお金に現れる。どんだけ売上が多くても、すぐに使えるお金が少ない組織は不安定だ。

 

だいたい、組織で働く人のやる気も上がらない。不正で得をしている人がいる組織で、真面目に働こうと思うだろうか。組織というのは時代に合わせて変化、向上しなければ消える存在だ。やる気がない人たちが集った組織は、どれほど資金が潤沢でも3代でフェードアウトする。組織にとって不正はがんだ。『引っ越し大名!』は「不正をどう無くすか?」を問いかける作品でもあった。

 

『翔んで埼玉』を観た時も思ったが、コミカルな映画は学習まんがだ。文章では分かりにくい内容を楽しみながら学ばせてくれる。『引っ越し大名!』も学べる作品のひとつだ。仲間づくり・お金・膿出し以外にも組織改革のヒントが散りばめられていた。歴史好きだけでなく、組織運営に困っている人にもぜひ観てもらいたい作品だ。

 

私は歴史好きでユーモア好き、『刀剣乱舞』大好きなので満足だ。”御手杵”の槍が主人公の親友である達人にぶん回されている。それを観ただけでも来た価値はあった。

 

つけ加えるならば、主人公が草食男子なのも注目ポイントだ。”強い女性と頼りなくみえる男子”、この組み合わせは最近の流行だ。日本映画だけでなく、ハリウッドやディズニーなど海外映画でも増えている。高齢の友人には不評だが、私は面白いと感じる。

 

身体のつくりが違う男女をすべて同じように扱うのは無理がある。けれども、過去につくられた常識に縛られるのも問題だ。いいバランスを考えるためにも、いろんなキャラクターが物語でも存在してほしい。登場人物の正確の多彩さも『引っ越し大名!』の魅力だ。魅力ある組織に個性的な人が多いように。

 

流れのない水は腐る。

 

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