歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

【歩くリトマス試験紙の反応記録】言葉はクローン

言葉はクローン

 

2019年9月21日 会議室

 

今日は医療系の勉強会に参加した。内容は高齢者向けだ。参加した人の平均年齢はおそらく65歳以上だろう。講師の先生も60歳を過ぎている。40歳未満は私しかいない。周りの雰囲気も、使われている言葉も、昭和の香りがする。タイムスリップしたような気分だ。

 

言葉を意識して話す人は少ない。ほとんどの人は無意識で使う言葉を選んでいる。だからこそ、言葉には本質が現れる。

 

言葉は生き物だ。時代、地域、年齢などで変化する。昔はよく批判された”ら抜き表現”も、日常会話では問題ない表現として使われている。おそらく、あと10年もすれば注意する人すらいなくなるだろう。

 

文法の仕組みだけではない。言葉の意味も変化する。『確信犯』は現在、「悪いこととわかっていながら、わざと行う発言や行為」と理解されている。だが、これは最近の話だ。平成より前の時代では「自らの行為を正しいと確信してなされる思想犯・政治犯・国事犯など」という意味で使われていた。。辞書では、今でも”正しいと確信してする行為”が1番目、”悪いとわかっていて行う行為”が2番目に書かれている。

 

新しく生まれる言葉もある。『サブスクリプション』が日本で語られだしたのは、ここ数年だ。毎月、定額を支払う仕組みはパソコンが世に出る前からあった。英単語としても昔から存在する。しかも、意味が違う。英単語の”subscripption”には寄付など会費以外の意味がたくさん含まれている。なぜ、いきなり日本で出現したのか?

 

収入の減少

 

人口の大部分を占める層は中間層と言われる。この中間層が自由に使えるお金が、世界的に減少を続けている。しかも、分割払いができる信用もない。結果、企業の売り上げが減った。だから、お金に余裕がない人でも購入できる仕組みが生み出された。

 

「ソフトの更新を企業にお任せ」

「新しい機能をすぐに使える」

「使いやすい価格でご提供」

 

こんなセリフは言い訳に過ぎない。売り上げを確保しようと必死なだけだ。カーシェアなどの共同使用やベビー用品などのレンタル事業も、本音は同じだ。厳しい時代だというのが言葉の変化からも読み取れる。

 

言葉の変化は時代を映す。だが、映し出すのは時代だけではない。個人についても言葉は教えてくれる。時代よりも、よっぽどわかりやすい。

 

まず言語と方言に注目する。これだけで、どの地域に生まれたかがわかる。次に使う言葉の共通点、どれだけ若くみせても何歳ぐらいかがバレバレだ。昭和、平成、令和、育った年代が違えばよく使われる言葉は違ってくる。最後に選ぶ言葉、これが一番の注目点だ。その人の人格が浮き出る。私のように体調で選ぶ言葉が変わる人もいる。

 

「言葉なんて、いくらでも誤魔化せる」

 

そんな甘くはない。どれだけ気を配っても、めったに使わない言葉や本音じゃない言葉は薄っぺらい。無意識に出る言葉と意識して使う言葉は、発声も違えば相手に与える印象も同じじゃない。その場を取り繕えたと本人は思っていても、周りには見透かされている。

 

詐欺師が人を騙せるのは、何度も繰り返し詐欺トークをしているからだ。超一流になると、本音だと自分すら騙して語る。だかからこそ、人生経験が豊富な人でも騙される。

 

言葉というのは対象のクローンみたいだ。どれだけ見た目を整え、肩書きで飾り立てても偽れない。一定期間、観察を続ければ本質はつかめる。時代のような捉えきれないほど大きな存在も、個人のような100年ほどで消えてしまう小さな存在も、どちらも言葉の前では丸裸にされる。使う言葉には注意したいものだ。

 

使う言葉が変わったとき、

その人の中身も変化している。

 

[参考]

文化庁 「確信犯」の意味

www.bunka.go.jp

 

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  • 出版社/メーカー: 学研プラス
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