歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

【歩くリトマス試験紙の反応記録】隠れていた記憶が戻った日

隠れていた記憶が戻った日

 

2019年9月29日 焼き鳥屋

 

友人といっしょに外食をしていた。注文が済み待機中、友人はスマートフォンをいじっている。私はぼんやりとしていた。ふいに映像が頭をよぎった。覚えのないエピソードだ。自分が登場しているのに。

 

考えること3分、映像の意味が分かった。

これは封じられていた記憶だ。

 

なぜ、焼き鳥屋で思い出したのか。

純粋に感動できない。

 

「しまらないな」と、ため息をついた。

 

その後、友人を巻き込み

”記憶が戻っておめでとうの会”を臨時開催した。

 

 

記憶障害、ひとことで言えるが症状はいろんなパターンがある。私は無自覚のパターンだ。友人に指摘されるまで全く気づいていなかった。幼稚園に通っている頃の記憶ですら、おぼろげにある。それなのに、中学生時代の記憶がほとんどない。小学生、高校生の時の記憶も半分ほどない。友人が言うには、今でも記憶がない時があるらしい。

 

多くの記憶を失っている。

それなのに、違和感を少しも感じなかった。

これまで出会った人も気づかなかった。

 

なぜ、友人以外には気づかれなかったか?

 

『別人格』

 

精神科で教わった。心を守るために、負担が大きい記憶は別人格が隠しているらしい。私は別人格が表に出ている場合は少ない。こっそり脳内で隠蔽作業をしている。別人格は周到だった。本人にも、周りにも、疑問を持たせない調整を徹底していた。なお、見抜いた友人は映画狂である。映画への批評眼が人間観察にも活きたようだ。

 

精神科に通いだして半年が過ぎ、はじめて記憶が戻った。

思い出した記憶に納得するしかなかった。

 

「記憶障害になったのも不思議じゃない」

 

相手はまだ生存しているので、詳しくは書けない。

だが、これだけは言える。

 

「人としてダメすぎる」

 

動物よりも心がない。

そう言いたくなるほど、ひどい目にあっていた。

 

同時に、自分自身が壊れていたことにも気づいた。20年以上も前の記憶なのに胸がズキッとする。そんなエピソードなのに、当時の自分は何も感じていなかった。ひどい扱いを自然に受け入れていた。まるでブラック企業に勤める社員のように。

 

 

そんな自分を気持ち悪く感じた。ロボットでも、最近は感情を表す。顔の表情すらピエロのようだ。ただ周りが求める回答を出し続ける機械のような存在、それが隠された記憶の中にいた私だった。

 

不思議だ。

 

苦しさを感じていなかったのに、別人格は記憶を隠した。別人格は、主人格に不利益な行動はとらない。周りからみても、本人にとっても「損しかない」と思われる行動でも、実は心を守るために最適な行動をとっている。表面上は何も感じていなかった。けれども、心の奥底では泣いていたのかもしれない。

 

記憶障害になった。これは喜べる状況じゃない。しかし、私には必要だった。きっと記憶を封じていなければ、今は墓の下だった。そして、心が安定したからこそ「この記憶は返しても大丈夫そうだ」と別人格が判断したのだろう。

 

はじめての記憶返還、出だしから開けっ広げな私でも世間に公表できないエピソードだった。まだ脳内に隠れている記憶はどれほどヤバいのか。想像するだけで恐ろしく感じる。物語のネタとしては美味しそうなところが悩ましい。パンドラの箱には、まだまだ悪徳が眠っていそうだ。

 

人生に不必要なことは起こらない。

 

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