歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったり生きる』

【歩くリトマス試験紙の反応記録】映画『真実』に人の危うさを学ぶ

映画『真実』に人の危うさを学ぶ

 

2019年10月21日 映画館

 

「行くぞ」

 

またか。映画狂の友人の誘いだ。今回の作品は映画『真実』、友人にしては珍しいチョイスだ。フランス映画に誘われたのは初だ。この作品の監督は是枝氏、映画『万引き家族』で賞をとった方だ。ちなみに、私は映画『万引き家族』を観ていない。こういう高尚な作品を理解できる自信がまったくない。だが、今までの経験上、断っても友人からは逃げられない。黙って、うなづいた。

 

フランスらしいな。

 

日本人監督の作品なのに、フランス文学と受けた印象が同じだった。一言で表すならば、ほの暗い。ひっそりと森に隠れた泉のように透きとおる映像、語られる言葉の響きも心地よい。だが、人の心はドロドロだ。むしろ背景が美しさが人の心の不純さを浮かび上がらせている。

 

”真実”、なんとも皮肉めいたタイトルだ。

 

事実はひとつでも、それぞれが想う”真実”が違う。ひとりの人間の中ですら、いくつも”真実”がある。人のご都合主義な性質が余すところなく映し出されている。

 

どこか重くなりがちな作品を明るくしてくれるのが、一人の少女だ。少女視点が多いからこそ穏やかに観ていられる。少女の母視点なら惨事、祖母視点なら大惨事だ。祖父視点や、家令視点の心の闇も深そうだ。良い人の立場だった父、祖母の料理人視点も油断できそうにない。善意の象徴、フランスならばジャンヌダルクと例えるべきか。祖母と共演する若い女優の心も疑いだせばきりがない。少女だって、純真とはほど遠い。

 

明るさを前面に出しているのに、黄昏時にふと視界の端に写る闇のような暗さが背すじをヒヤリとさせる。けれども、その闇が引き込まれそうなほど魅力的だ。ほの暗い”真実”を心の内に隠し、微笑む。きれいなだけではいられない、人間の生々しさが作品に奥行きを与えていた。

 

人の危うさ、なんて引きつけられるんだ。

 

理性のままには動けない。過ちをいくつも犯す。どこまでも不完全な生き物、それが人間だ。だが、そのダメな部分がとても愛おしく思えた。問題しかない男性に魅かれる女性の気持ちが少しわかった気がする。

 

なんて感情を教えてくれたんだ。是枝監督と誘ってくれた映画狂に感謝すべきか、不満を訴えるべきか。とても答えが出ない。だが、これだけは言える。高尚さの欠片もないガサツな私でも魅せられるほど、ステキな作品だった。

 

きれいなだけでは興味は集まらない。多くの人が口をそろえて責めるような危なさが、かえって人の心を呼び寄せる。ストーリーの神髄も教わった気がする。「ダメさの研究をしよう」と心に誓った。ちょうどいい題材はここにある。前もって連絡するという意識がない。そんな映画狂は観察対象にぴったりだ。

 

私は笑顔を浮かべて、友人を振り返った。

おや? 友人の顔が引きつっている。

どうかしたのかな?

 

その後、友人は昼食をごちそうしてくれた。理由は教えてくれなかった。

 

危うさに、魅了される人は多い。

魅了された人の多くは、破滅へと足を進める。

綱渡りができるのは、ほんの一部だ。

 

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