映画『ルパン三世 THE FIRST』に愛は隠せないことをしる
2019年12月8日 映画館
珍しく、父がふらっと帰ってきた。
なんてタイミングで戻ってきたんだ。
昨日、妊娠がわかったばかりなんだが。
しかも、流産の確率が高い。
なお、父の昔の口癖は
「孫は欲しいが夫はいらん」
「最近の男はDVとか危険すぎる」
父がパチンコにハマってお金がなく、給食代が払えないと頭を下げる。私が何回、学校の事務所で頭を下げたと。ちなみに、父が頭を下げたことはない。
まさに、お前が言うなである。
今も昔と変わらなかったら、さすがに拳がうなっていた。
これを笑顔で流せる私は、自分でも凄いと思う。
さて、父がどこかに行こうと誘ってくる。半分、過去の罪滅ぼしだということは察している。正直に妊娠を言うわけにもいかない。
ペースメーカー入りの心臓病患者に、過激な話題は酷すぎる。妊娠だけを伝えると、流産したときショックがきつい。私の製造元だが、心が強くないのは知っている。「妊娠したけど、流産の可能性が高くてね。救急車で運ばれるかも」なんて言ったら、父が救急車で先に運ばれてしまう。私は、責めて安定期に入るまで黙っていることにした。なお、なんの偶然かパートナーもペースメーカー入りである。私の人生に安定と言う言葉はない。
いろいろ考えた末、映画を観に行くことにした。近くで、動く量が少なく、室内で温かい。お腹の子の体調が最優先である。
ちょうど映画『ルパン三世 THE FIRST』が上映されていた。父も私と同じく、アニメが好きだ。もう一度、映画『シティハンター』(フランス版)を観てもよかった。だが、父が3Dに興味を持ったため、映画『ルパン三世 THE FIRST』に決まった。アニメ好きで、新しいもの好き、こういうところは血のつながりをかんじる。
過去のルパン三世のアニメについて語り合いながら、劇場に向かった。
なぜだ、なぜなんだ、スタッフよ。
どうして、どうして最も気合いが入っているのが、
石川五右衛門の髪の毛なんだ。
わかる、わかるよ。
石川五右衛門はいいキャラだ。
私も、次元大介の次に好きなキャラだ。
けれども、商業的にはどうなんだ。
ふつうは主役のルパン三世とか、
お色気役の峰不二子に手をかけるはずだろう。
なぜ、峰不二子の髪よりも石川五右衛門の髪がきれいなんだ。
服のしわも、布の揺れも、武器のきらめきも
すべて石川五右衛門に軍配が上がる。
それでいいのか。
商業的にはアウトかもしれないが、私はスタッフの愛を称えたい。石川五右衛門が最推しのスタッフがいるのだろう、しかも熱烈な。それを確信させてくれるほどの愛をみせてもらえて、私はとても満足だ。
なぜ、確信できるか。
趣味で3Dをいじっているからだ。
素人に気軽に遊べる文化をつくった、MMDの関係者には感謝しかできない。
趣味といえども、半年ぐらいは熱中した。今でも遊んでいる。なので、どれほど3D映像を作るのが大変かは、全く触ったことがない人よりは察せられる。完璧に作るのでは足りない。人間らしさをだすために、あえてバランスをくずす。和菓子職人がお菓子を作るような繊細な調整を2時間の映像分作り上げる労力、想像すらできない極地だ。
その中でも、髪や布などの細かく揺れる表現と刀の輝きを調整する作業は恐ろしく難しい。日本人向けなら、実は銃の方がたやすい。3Dの最大の壁は、見慣れているものを表現することだ。髪も布も見慣れている対象だ。刀は普段の生活で見ない? 包丁やハサミ、カッターナイフは家にないだろうか?
それほど、難しいものに全力で手間をかける。
気づく観客は、ほとんどいないのに。
よほど、推しの凛とした姿が見たかったのだろう。
カッコよさと美しさを兼ね備えた石川五右衛門、素晴らしかった。
これは、愛がなせる業でしかない。
ふと、横の父を眺めた。過去に多くのトラブルを引き起こした父を、私が心から許せたのはあの日があったからだ。神戸の震災の時、父が自分の体を盾にして守ってくれた。あの出来事がなかったら、許せていたか自信はない。
愛というのは、
口に出さなくてもにじみ出るものなのだな。
愛は隠せない。
それを、映画『ルパン三世 THE FIRST』に教わった。
物語は多くのことを教えてくれる。
それを確信する一日になった。
愛していることも、
愛していないことも、
どちらも隠すことはできない。
自己紹介でもある記事
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