ごまかしはボディーブロー
2020年2月14日 自宅
「量が少なかったぞ」
ショックだった。
本日はバレンタインデーである。いつもお世話になっているパートナーに、前もって買っておいたチョコレートをプレゼントした。甘党の上に舌が鋭いので、ちょっといいチョコレートである。去年、喜んで食べていたメーカーと同じものを渡した。
「おっ、サンキュ」
受け取って、部屋を出て行った。
軽い。
けれども、わかっている。
これは照れくさいのだ。
渡してすぐに、素直に反応が返ってきたことがない。振る舞いがちっさい男の子である。こういうところが可愛いのだが、口にするとプンプン怒る。とても面白い。
数分後、部屋に戻ってきた。
「上げ底で、チョコの数が少なかった」
「前回の半分くらい」
は?
チョコの入っていた箱をみせてもらう。明らかに底がぶ厚い、1年前に購入したものと比べると2倍近い。なお、値段は前回よりも高めを選んだ。
これはひどい。
原材料費や人件費、運送費も上がっている。そして、値段を上げると購入者が減る。だからといって、材料をケチって味を落とせば評判が下がる。なんとか、値段を変えずに済ましたい気持ちはお察しする。
だが、この対応は逆効果だ。
バレンタインのチョコレートはいろいろな思惑が込められる。きれいな感情ばかりではない。仕方なく準備する人もいるだろう。それでも、ほとんどの人は贈った相手に喜んでもらおうとチョコレートを購入する。
その商品が、こっそり量をごまかしている。
残念としか言いようがない。
ごまかしは言い過ぎかもしれない。私のチェックが甘かった。箱裏の表示をきちんと読んでいれば、チョコレートのグラム数が少ないことに気づけた。見た目だけで判断した、私にも問題はある。それでも、ガッカリしたという事実は変わらない。このメーカーの商品に、以前ほどの期待は持てないだろう。
質や量をごまかす方法は悪手である。お客さんは鈍くない。質や量の変化に必ず気づく。そのとき、失われるのは信用である。たとえ表立って悪評が広まらなくても、ボディーブローのようにダメージがじわじわ襲ってくる。
購入してもらえなくなる。
新商品も売れなくなる。
口コミで評判が下がる。
たとえ再び購入してくれるとしても、以前ほど気安く手にとってはくれない。私も来年のバレンタインで、同じメーカーのチョコレートを買うのは悩むだろう。味が去年と同じく美味しかったのが、せめてもの救いである。味まで落ちていたら二度と購入しなかった。購入前にチョコレートのグラム数を計算するのも確定である。同じ失敗は繰り返したくない。
これが自分用に購入したものだったら良かったのに。よりにもよって、日ごろのお礼用の贈り物での出来事である。メンタルが超合金、とパートナーに言われる私でもショックである。後日、チョコレートを再び購入して渡すと決めた。そのメーカーは、今回の上げ底メーカーではないだろう。味が確かだとしても、しばらくは購入する気になれない。
こういうとき、パートナーは私をバカにしない。普段は、ドジをするたびにからかうのに。そういう態度が私の信用を深めている。信用は日々の行いの結果である。
厚い信用は、1日では築けない。
だが、その信用を失うのに1秒もかからない。
信用は得難く、失いやすいモノである。
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