あまりに美しいグラフにAIの限界をみる
2020年3月13日 自宅
「ぶはっ」
あまりの一致ぶりに、笑ってしまった。
人間とAIの大きな違い、私は一貫性だと感じている。人は感情でゆれ動き、常に冷静な判断はできない。AIは現状、プログラムされた通りに動く。プログラムを外れた動きはしない。 今日の金融市場のグラフは、それをよく表していた。
グラフの形が同じ
為替も、株も、商品先物も、コピー&ペーストしたかのように、グラフが同じ形を描いていた。数値が動くタイミングと動いた幅が完全に一致している。これが、現在のAIの弱点である。
動きがよみやすい
世界中で言われることだが、日本人は泥棒に狙われやすい。
お金がある?
反撃してこない?
間違っていないが、日本人に特有の理由ではない。お金を持っている人は他にもいる。反撃をあまりしない人もたくさんいる。泥棒に狙われやすい日本人の特徴はこれだ。
時間に正確な人が多い。
常に5分前集合
常に出社1時間前に喫茶店に入る
常に帰る電車が同じ
同じ行動を、同じ時間に繰り返す。
これほど、犯罪計画が立てやすい相手はいない。
決まりきった行動をする。これほど、競う相手として楽な人はいない。将棋や囲碁などのゲームでも、企画のプレゼン勝負でも、家族とのじゃんけんでも、相手の次の行動がわかっていれば勝率は上がる。
将棋や囲碁では、AIの方が強いじゃないか。
囲碁や将棋は、行動の回数が有限だ。参加者全員がルールを守り、乱入者もいない。そんな状況は、現実では考えにくい。行動の回数制限はないし、参加者がルールを守るとは限らない。おまけに乱入者が現れるだけでなく、天災や感染症などでルールが途中で変わることもある。AIの対処能力の最大値は、製作者の想像の範囲が限界だ。そして、現実というのは人の予想を超える。AIで対処しきれるはずもない。
まだ、問題がある。金融市場に参加しているAIはひとつではない。世界最高峰の頭脳を持った人たちを集め、巨額なお金をつぎ込んでつくられた。そういうAIがいくつも参加していたのに。
なぜ、よみとりやすい美しいグラフになってしまうのか?
目的と使用データが同じだからだ。
金融市場に投入されるAIの目的は最大限に利益を上げることだ。そして、使用されるデータは毎日の金融市場の動きである。どこの証券会社や投資ファンドや銀行のAIであろうと、この基本は変わらない。将棋や囲碁のAIが製作者が違っても最終的には同じ結果を出すように、金融市場向けのAIも高度になるほど同じ結論になってしまう。結果、別々のAIが同じ動きをするので乱れのない美しいグラフになる。
これは、AIに限らず人間にも言える。同じ日常を繰り返し、効率よく結果を得ることだけに集中する。こういう人は環境の変化にもろい。争う相手としては、とても対処しやすい。行動パターンがよみやすく、相手の当たり前を崩すだけでパニックになる。行動が予測できて、冷静さを奪っている。むしろ、これで負ける方が難しい。
効率は大事だ。私は体力がポンコツなので、日々、無駄のない動きを心がけている。だが、それでは人としての幅が狭くなる。AIが全盛になれば、社会の隅に追いやられる存在になるだろう。効率よく動く、この分野ではAIに勝ち目はない。
私は思う。
非効率で
何の価値もない
無駄な行動
そんな行動にこそ、AI社会に適応できるヒントが隠れているのではないか?
なぜならば、AIには非効率な行動が出来ないからだ。
無駄を楽しめるのは、生物だけの特技である。
芸術は無駄から生まれる。
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