失うばかりではない
2020年5月2日 自宅
こんな形で夢が叶うとは。
人生とは、わからないものだ。
コミックマーケット
通称コミケ
個人がつくった幅広すぎる作品を持ちよるイベントだ。年4回、季節ごとに開催されている。最近は企業の出店も珍しくない。今年の春は、感染症の流行で中止になった。だが、ただでは転ばない。Twitterなどを利用してのイベントが開催された。コミケの運営スタッフに一般の方々がのっかり、まるで予定通り開催されたの様な雰囲気で盛り上がっていた。もちろん、出展予定だった作品も販売される。逆境に強い、オタクの底力が現れていた。
ひゃっほい
私は一度でいいからコミケに参加したいと熱望していた。けれども、身体がそれを許してくれない。コンサートやライブにすら参加できないほど体力がない。おまけに人混みはドクターストップだ。長蛇の列という言葉が生ぬるく感じるほどの群れ、万単位の人々が集まり汗で雲ができるような空間に、私のようなへっぽこな生き物は存在を許されない。毎回、いいなーと指をくわえながら通販で頼んだ同人誌を読むだけだった。
だが、今年は違う。
ネット上とはいえ、自分も一大イベントに参加できる。
感染症で世間が苦悩している中、大変申し訳ないが、私のテンションは上がる一方だった。箱から出したばかりで少しも冷えてないミネラルウォーターも、新宿駅の満員電車よりも過酷な乗り換えも、戦利品を抱えすぎて動けなる嘆きも、参加できない生き物からすれば恨めしくて仕方がなかった。
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いつもと変わらない行動なのに。
すごく楽しい。
お祭りに初参加した子供のノリである。失礼な発言をしないよう、本音をラッピングするのすら容易ではない。自分の熱狂ぶりに、もう一人の自分があきれている。
知ったことか。
二度とないこの機会を存分に楽しむだけである。
結果、1日で6時間ほど使った。
後悔は1ミリもない。
この感動を忘れる日はないだろう。
想像したことすら、なかったのだから。
人生は失うことの連続だ。自分に原因がなくても、予想外のトラブルで手からこぼれ落ちることもある。人の命のように、長く苦悩するような喪失もある。けれども、失った分、別のなにかが手に飛び込んでくる。不思議なもので、失ったものが大きいほど得るものも大きい。失ったものの代わりには決してならないが。
失った現実はどれほど否定しても変わらない。こちらにできるのは、得たものを最大限に生かす工夫だけだ。得たものを自ら捨て、傷口を広げるような行いだけは避けたいものだ。
残酷だが、奇妙な公平さがある。
それが人生だ。
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