言葉には香りもある
2020年6月16日 自宅
似てるな~。
これだから、やめられない。
ちょっとした頼まれごとに応えた。そうしたら、ぜひお礼がしたいと言われた。なにも望む気が無かったので困った、なんてことはない。こういう時に、私が言うセリフは決まっている。
「最も大切にしている本を教えてください」
ちなみに、本が苦手な人だった場合は好きなモノの話を聴く。『こいつはお人好しそうだから、こき使ってやろう』なんて思惑が透ける人だった場合は、まったく別の対応になる。どんな相手にも平等に接するほど優しくはない。
オススメの本ではないのか?
オススメの本だと、こちらに合わせた本が出てきてしまう。違うのだ。好む文章はあるが、誰かに尋ねる時は違うのだ。自分では見つけられない本に出会いたいのだ。大切な本だと、その人だから見つけられた本を教えてもらえる。こちらが求めないのに感謝のお礼がしたいと思える人は、人格が素晴らしい方が多い。そういう人が何度も繰り返し読むような本はハズレがない。私にとって、これほど嬉しいお礼はない。
大切な本というのは面白いもので、どこか教えてくれた本人と似ている。著者だったり、登場人物だったり、パターンは様々だが共通点があるという特徴はぶれない。
本に影響されたのか?
私は違うと感じている。
おそらく、言葉に引き寄せられたのだ。
自分に重なるところがまったくない文章を読み続けることはできない。今は違っていても、時を経ることで似てくる。そういう部分がない本は家の中から去っていく。気性が合わない人とは自然と距離ができるように。
まるで花の香りに魅せられた蝶のように、人は言葉に引き寄せられる。大切な本に出会った瞬間を尋ねると、こう返ってくる。
「何気なく手にとったら」
「なんとなく目が惹かれた」
「たまたま」
探し抜いて見つけた、そういう応えが返ってきたことがない。本との出会いは人の出会いとそっくりだ。運命の赤い糸なんて言葉があるが、本とも繋がる糸があるのかもしれない。
書く言葉だけでなく、読む言葉にも人格が現れる。
言葉というのは底知れぬものだ。
本棚をみろ。
そこに、自分が映っている。
自己紹介でもある記事
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