私はトカゲじゃなかった
2020年7月10日 自宅
そんなことまで違うのか。
嬉しくない。
パートナーが非接触体温計を手に入れた。肌に当てなくても数秒で温度が測れる体温計だ。あまり多くの人と会わない私たちには必要だとは思えない。理由を聞いてみた。
「短気さと張るぐらい、あんたはすぐ体温が上がる」
「これなら、気軽に測れるだろ」
いたわりの気持ちだったようだ。イラッとする言葉を省き、足りない言葉を補うと『体温の変化にすぐ気づくことで体調悪化を防げるのではと思い、数秒で結果が出る体温計を手に入れた』、こうなる。10年以上も付き合っているとこの程度の翻訳はたやすい。相変わらず、誤解されやすい道を突き進むお人である。
額でまず測る。
測るたびに温度が違う。
「相変わらず、不器用だな」
知ってるわ、どちくしょう。
にやつく顔にぞうきんを眼球狙いで投げたくなった。
ブレイクだ、私。
ガキ大将メンタルの70歳児の言葉をまともに受けるんじゃない。
自分でうまくできないならば、
できる人に思いっきり放り投げればいい。
「温度を測るのは任せた」
「は? なんでだよ」
「私できない人、あなたできる人、これ適材適所」
「ちっ」
パートナーは器用なので、数回で同じ結果が出る測り方を覚えた。
うん?
なぜ、服をめくるのだね。
「あんたは体の部位で熱さが違う」
「試しに測ってみる」
それは、私も常々感じていた。汗のかき方や服の温度がちょこちょこ違う。ただ、体温計でわかるほど大きな違いが出るのだろうか。疑問に思いつつも協力してみた。
額の上 36.5度
脇の下 37.2度
肋骨周り 38度
どういうことですか?
データは一回だけの測定ではあまり参考にならない。
3時間後に再度、測ってみることにした。
もちろん、測るのはパートナーである。
額の上 37度
脇の下 38.1度
肋骨周り 36.8度
WHAT?
「でたらめな体だな」
何も返せない。医師に「爬虫類に近い体」と言われてしまったぐらいだ。自律神経がまともに働いていないのは知っていた。体温がころころ変わって安定しない。けれども、体温が上がりやすい場所まで変わってたなんて。しかも、体温計でハッキリわかるほど温度差もひどい。これではトカゲでなく、未確認生命体である。
わからないのは、病気の原因と治療法だけでお腹いっぱいである。なんで、そこに人間としてもおかしい別腹がつくのだ。わが宿命は原因不明をどれほど積み重ねれば気が済むんだよ。文句は多量に浮かぶが、目の前にある現実は変わらない。次の診察で医師に報告しよう。他者への問題の押しつけだ、自分では判断しようがないので。
自分の体について詳しくなるたびに思う。
世間の常識って、絶対じゃないんだな。
疑いようのない真理を繰り返し突きつけてくる。
嬉しくない。
人が理解できることは砂一粒もない。
あらゆる現象に比べれば。
その砂一粒ですら、自由に扱えはしない。
自己紹介でもある記事
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