心理学から移動しました
2020年7月17日 自宅
過去は剝がせないものなんだな。
複雑である。
毎日のように実体験を元にした文章を書いている。これはこれで楽しいが、最初に文章を書こうと思ったきっかけは物語だ。想像で描いた世界も言葉にしたい。なので、創作の助けになりそうな資料も集めている。衣装や道具や古地図などの外側だけでなく、言い伝えや言葉の成り立ちのなどの内側の資料も読み進めている。
物語で最も大事なのは登場人物だ。いかに魅力的なキャラクターを生み出せるか。これですべてが決まる。誰もが認めるような理想の人物を描けばいい、なんて単純じゃない。ダメなところだらけなのに心惹かれる。ダメな部分で共感を、惹きつけられる部分で憧れを、どちらも兼ね備えていないと入口にも立てない。完璧に近い人物はゲストキャラが限界である。
物語を言い換えれば、人間関係の記録だ。人間の心理がわからないければ魅力的な話を描けはしない。歴史や文学は、幼少期から好きな分野だったのでソコソコ読んだ。けれども、心理学はフロイトぐらいしか熟読していない。だから、まずは心理学から研究しようと思った。ストーリー作りだけでなく、キャラクター作りにも役立ちそうなので。
半年で挫折した。
「こんな現実はなかった」
「そのやり方は効果がなかった」
「否定されている内容、体験済みなんですが」
脳内で反論の嵐が止まらない。いや、わかっている。日本で心理学に注目が集まったのは最近だ。論文の元になるデータは海外のものや古いものが多い。1,000人未満を調査したものも多い。海外の万単位で集めたデータとは比べ物にならない。戦争がらみで潤沢に投入された予算を日本が用意できるはずもない。だが、最新の書籍に70年以上前の海外のデータしかないのは笑えない。
データが古いのは仕方がない面もある。現代ならば罰せられるような惨い実験も、過去には繰り返し行われた。脳を切り取るなどの体を傷つける実験もあった。データ元をたどったら拷問の記録だった回数は覚えていない。世界大戦の年号と心理学のデータが増えた時代が一致しているのも納得である。
心理学の書籍では心を壊した人の話が多い。心を壊した原因が書かれている。自分が味わった出来事と似た体験が数々出てくる。そのせいで、キツイ体験がフラッシュバックして気分が悪くなる。夢で追体験したこともあった。その影響で体調が崩れる日が増えた。
日常生活が平穏に過ごせていても、過去の傷が塞がったわけじゃない。
あの日々に感じた恐怖を忘れることなんてできない。
身をもって、理解できた。
私は、心理学の書籍を読むのをやめた。
心理学の表面を扱った本なら読める。だが、深い内容だとトラウマを直撃する。戦争を体験した人が日常に戻れない。その一端が理解できてしまった。トラウマになった出来事に近寄ると、生々しい過去が目の前に蘇る。この実感を得たことはプラスだった。臨場感ある心理描写ができそうだ。
人間を学ぶ方法は心理学だけじゃない。
とりあえず、古巣の歴史と文学を再び巡ろう。
心理学の世界にサヨナラした。
心の傷は治りにくい。
本人が忘れた傷すら、
何十年後に致命傷になることもある。
誰にも知られぬままに。
自己紹介でもある記事
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