映画『Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!』にカッコよさを学ぶ
2020年9月5日 自宅
「これ、観ないか?」
パートナーが映画鑑賞を誘いに来た。もちろん、自宅での視聴だ。この数か月、かなりしつこく映画館に誘われた。だが、私は一度として折れなかった。さすがの映画狂もあきらめたようだ。私の体調がずっと良くないこともあり、最近は部屋でのんびり映画を楽しんでいる。
今日のお誘いは映画『Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!』、前から観たいと思っていた作品だ。Mr.ビーンの動画はいくつか楽しんだが、短い物ばかりでじっくり味わうような長い動画は観たことがない。映画狂が体調不良の物語愛な生き物につまらない作品を勧めるとは思えない。だいたい、私はジェフリー・アーチャー氏の書籍『百万ドルをとり返せ!』に小学6年で出会った時からイギリス的ブラックユーモアが大好きだ。悩む余地はない。
パートナーのぷよっとしたお腹を突きながら、動画の再生を待った。
爆笑
わかっていたけど、爆笑
ひどすぎるけど、爆笑
タイトルと微かのズレもない、国をまたにかけた大迷惑が次々と襲いかかってくる。周りの驚愕と怒りと悲しみ、その他いろいろなリアクションとMr.ビーンの「私、なにかしましたか?」な態度とのギャップに笑いが止まらない。漫画『ヘタリア』がアピールする紳士な面は衣装ぐらいだ。基本のノリはパブ、つまり酔っぱらったおっちゃんだ。こちらが腹を立てても、相手にはまったく響かない。当事者だと腹立ちでイライラするだろうが、画面向こうのコチラからすればそのズレが面白い。喜劇と悲劇の違いは視点の距離の差にすぎない。その言葉の意味がよくわかる作品だ。
それにしても、すごいのがMr.ビーン役ローワン・アトキンソン氏の演技力だ。顔の動きの多彩さもすごいが、体の動かし方もすごい。普通の人なら転ぶような姿勢でもまったくグラグラしない。笑いを誘う演出に誤魔化されそうになるが、よく観察するとひとつひとつの動きが無駄なく美しい。食べ物を吐き出したり、エロさをさらけ出すなど、下品と言われるシーンでも見苦しく感じないのは立ち居振る舞いのおかげだろう。
Mr.ビーン役の皮を剝げば英国紳士が現れそうだ。鍛えられた体に脚本を書く頭脳、食事の場面で垣間見える指先の品位は、ふと目に見せるメイクや衣装や間抜けっぽい表情やお下劣な演出でも隠しきれてない。内面と演出とのギャップも、Mr.ビーンという役の魅力になっているのだろう。真のカッコよさは何をしても隠せないのだ。
映画『Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!』 には歴史や古典に名言などの引用が隠しアイテムのように散らばっている。知らない人が観ればただのコメディだが、ちょっとでもこの仕掛けに気づけば、その知の深さにひれ伏すしかない。ある意味、こちらの教養が試される作品だ。その点でも、Mr.ビーンらしい映像だったと感じた。
人間の本性というのは言動に現れる。
隠すことはできない。
ひと時の笑いだけでなく、
人としての基本を叩きつけられた。
お腹と心にダメージを与える。
とてもいい作品だった。
パートナー、
今回もステキ作品を教えてくれてありがとう。
笑った拍子に
お腹に頭突きをして申し訳なかった。
笑顔で許してくれた
お腹と同じくらい、でっかい心に感謝する。
乗り物の中で
にじみ出た美味しそうな香りに
お腹を空かせたことはないかい?
どれほど厚く包装しても
完全に消すことはできないのだよ。
中身がもつ香りを。
自己紹介でもある記事
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