多数決禁止な場面
2019年4月14日 自宅
映画『記者たち』は結末が観る前にわかっていた。ノンフィクション作品の宿命だ。それでも何ヶ月経とうと忘れられないシーンだらけだった。多数決をしてはいけない議題もあるんだな、と思い知らされた。
多数決は、楽を突き詰めた制度である。多数派になれば面倒はなくなる。別の意見を持つ人間を説得する必要はない。責任を取る必要もない。時間もかけなくていい。多くの人が損する内容であろうと問題なくOKが出る、それが生死に関わるものでも。
だからこそ、多数決の対象にしてはいけない。そんな場面はいくつもある。「家族の延命治療をするか?」「遺産をどう分けるか?」「だれが介護をするか?」命やお金、負担が長期にかかる選択の多数決はダメだ。その場は収まっても、後で憎しみのスパイス付き倍返しトラブルで返ってくる。場合によっては、子や孫の世代を過ぎても終わらない。『人間は感情の生き物』であることを忘れると、とんでもないことになる。
期限がある場合がややこしい。例えば遺産相続の場合、相続放棄の期限は3ヶ月だ。これを過ぎると、家の引っ越しが水を飲むレベルと感じるほど手間のかかる手続きになる。とても素人では手がつけられない。遺産放棄ができたとしても、放棄期限3ヶ月以内で行うより手間もお金も膨れ上がる。不動産がある場合は、もっと悲惨だ。まとまったお金がない場合、処分もできずに固定資産税だけ払って放置になる。日本で空き家が多い理由、第1位である。
どうしても多数決をしなければいけないなら、せめて関係者だけですることだ。権利のない人間が首を突っ込むと決まるものも決まらない。我が家は叔父の奥さんの母、相続権のない人間が口を出した結果、トラブルが15年続いた。叔父との付き合いは絶縁となり、両親の離婚と私の貧困経験の元になった。4歳の時に見た葬式の修羅場と抱いた感想「血縁と書いて”やっかい”と読む」は、頭に刻み込まれている。
多数決は誰でも即使える、便利で身近な方法だ。だが使いどころを間違えると、おぞましい毒を辺りに振りまく。振りまかれた毒が、何世代も残り続けることも珍しくない。多数決のメリット・デメリットを忘れないのが、うまく運用するコツである。
ネット注文の便利さは、個人情報が流出する危険とセットである。
<<2019年4月15日に続く>>
↓ ランキングに参加中です。