情報は相手の形に加工する
2019年6月6日 道路
「バランスのいい食事はなんですか?」
小さなお子さんがいる、お母さんに聞かれた。質問の範囲が広過ぎるが、おそらく食材のことだと当たりをつけて答えた。
「牛や豚、鶏肉に魚などの動物性タンパク質といろんな野菜と果物を多めですかね。海藻や豆や貝などもあればベストです」
「情報が多すぎて覚えられません」
「もしかして、育児雑誌で混乱してませんか?」
「はい、情報が多すぎて何がなんだか」
「それなら、これだけ覚えてください」
「野菜は色とりどり、肉を多めでご飯を少なめ」
「厳しいです」
「肉多め野菜カラフル、どうですか?」
「それならなんとか」
その後30分の雑談、別れることになった。嫌な予感がしたので尋ねたら、やっぱり忘れていた。「肉多め野菜カラフル」を3度唱えてもらった。
記憶力には個人差がある。理解力にも予備知識にも差がある。自分を基準に考えるとズレる。相手にとって、理解できない言葉は雑音と変わらない。
暗記力は個人差が大きい。本を1回読んだだけで一語一句違えず覚える人もいれば、100回読んでも1行も覚えられない人もいる。目が不自由で暗記に読むという手を使えない人もいる。そして、暗記力が低ければ長い文章の理解力は低い。文章のピリオドがつくまで内容を覚えていられない。必要な情報が足りなければ理解には辿り着けない。このことを、最近ではワーキングメモリとも言う。暗記力は理解力、そして判断力の土台だ。
相手の暗記力が高いなら気にする必要はない。だが、暗記が苦手そうなら工夫がいる。別に難しくはない。短く簡単なことばを心がけ、情報の密度を下げるだけだ。伝えたいことを5コ、3コ、1コと減らしていく。3行、1行、一言とことばの量も減らす。使うことばも漢字の割合を減らす。表情を観察しながら削減すれば、どこかで相手の顔がパッと明るくなる。覚えられた証拠だ。これで再度念押ししたり、復唱してもらえれば記憶が3時間ぐらいは持つ。この技は会話でも、文章でもまったく変わらない。
相手によっては、逆に難易度を上げる。20歳を超えた人に3歳の子供に語りかけるような言葉で伝えたら、「バカにしているのか」と怒り出すのが目に見えている。理解力が高い人に簡単な言葉を使うと失礼になる。そういう場合は、わざと専門用語を使い、要点多めで文章を長くする。
大事なのは相手に合わせることだ。ゲームと同じで、簡単すぎたら面白くないが難しすぎたらヤル気が失われる。伝えたいことは変えないが、相手に合わせてことばを加工する。変えないのは、時間の使い過ぎと一方通行に注意することぐらいだ。学校集会で長話する校長のような行動をとってはならない。
わからない長文は
疲れを与える兵器である。
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