書籍『世界のしんどい学校』に読む力向上への道をみる
2019年11月25日 自宅
最近、よく見かける言葉がある。
読解力
すごく、あいまいな言葉だ。これまで読解力は、受験などの試験問題の対策の文章などでよく使われていた言葉だ。だから、読者は大混乱だ。書店には試験対策の読解力と仕事など日常生活を過ごすための読解力、どちらも並んでいる。読む力を伸ばそうとする人を陥れる罠だ。この2つは似ているが、同じではない。
筆者の伝えたいことを受けとる。
これは試験用の読解力も、日常生活の読解力も共通している。
けれども、受け取り方がまったく違う。
試験用の読解力は、想像の手を広げてはいけない。書かれている文章のことだけを理解するように努める。そして、問題を解く。
日常生活の読解力は逆だ。むしろ、想像力をどこまでをも広げていく。「なぜ筆者はこの文章を書いたのか?」「何が目的なのか?」「この意見の根拠はなにか?」「この文章が投稿された影響は?」、多くの”?”を自分で生み出し、分析していく。
この2つを同じ言葉で表現している。
混乱するな、という方が無理がある。
もうひとつ、気になることがある。 日本人の読解力が下がった。聞き飽きるほど、繰り返している。それなのに、世界レベルの調査では日本の順位は悪くない。この矛盾はなんだろう。
だから、調べてみた。
ない、どこにもない。
書店で探しても、出てこなかった。
世界と日本の教育を比べる本はある。
だが、具体例が参考にするには少なすぎる。
というわけで、大きめの図書館に向かった。さすがに図書館は頼りになる。一冊の本と出会った。いくつかの国の学校を、研究者が取材して回った記録が根拠になっている書籍『しんどい学校』だ。
国同士のプライドがからんでおり、調査には相当なご苦労があったようだ。書店では見つからなかった。それも、納得だ。調べることもできないのに、本ができるはずもない。この1冊の本を作り上げたご尽力に感謝をしながら、読み始めた。
うん、大変だ。
大変さが日本の比じゃない。
これなら、日本の読解力が世界ランキングで高いのも不思議じゃない。なぜならば、世界の国々では公用語という壁が立ちふさがっている。日本でも起こっているが、規模が違いすぎる。
日本では、日本語を使う人が大多数だ。移民の方々が増えており、日本語で学ぶのが厳しい子どもたちの教育問題はある。対策が急がれているが、学級崩壊レベルではない。けれども、海外は違う。
すでに、学級崩壊が起きた後だ。公用語が使えない子どもたちへのフォロー、多言語で授業を行う方法、言葉に頼らない伝え方、あらゆることが試されていた。
10年以上は、少なくとも苦闘している。その結果の集まりが書籍『しんどい学校』だ。その結末は、トンネルの出口からわずかに光が差しこんだ。問題が解決してはいないが、乗りこえる学校は出てきた。そんな希望が持てる構成になっている。裏事情を考えると、とても素直には受け取れないが。
日本の状態は、まだマシだったのか。
まったく、嬉しくのない結論が出てしまった。
日本がマシなら、世界全体ではどれほど読解力が下がっているのか。フェイクニュースなどのデマが、世界的な社会問題になっているのも理解できてしまった。なんてぇこった。
世の中が平和なら、まだいい。
だが、災害や飢餓に疫病などの危機が訪れたら?
パニックが起こる未来しか描けなかった。
読解力の問題は子供の世界の問題じゃない。大人の世界の問題だ。それなのに、書店に並ぶ本の80%は試験対策だ。読解力、いや読む力を鍛えないと、とんでもないことになる。
ひとつ希望がある。書籍『しんどい学校』だ。少なくとも、多くの教育者が問題点に気づいている。そして、なんとかしようと戦っている。しかも、10年以上も前から。その実践的なデータは膨大な量になるはずだ。その中に読む力を向上させるヒントが必ずある。なぜならば、子供たちの学力を年単位で上げた学校があるからだ。成功例はすでにあるのだ。
海外で成功した方法を、そのまま日本に持ってきても大失敗するだろう。アメリカから輸入した経済手法で混乱した経済界、という例がすでにいくつもある。しかし、少しずつ成功例を試しながら、日本流にカスタマイズすれば。読む力を向上が成功する道はあるだろう。
その道を探るためにも再読だ。
再び、書籍『しんどい学校』を手に取った。
オーダーメイドの服は、本人にしか着こなせない。
だが、デザインを参考にすることはできる。
世界のしんどい学校――東アジアとヨーロッパにみる学力格差是正の取り組み (シリーズ・学力格差 第4巻<国際編>)
- 作者:ハヤシザキ カズヒコ,園山 大祐,シム チュン・キャット
- 発売日: 2019/09/20
- メディア: 単行本
自己紹介でもある記事
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