歩くリトマス試験紙の反応記録

『ありのままに、ゆったりと、みんなで』

【歩くリトマス試験紙の反応記録】口が悪い人は?

口が悪い人は?

 

2020年1月10日 自宅 

 

「おーい、生きてるか?」

 

生きてるよ。

だいたい、死んでたら返事はできぬ。

 

「あんたは鬼だ」

 

それは、鬼のような行動をとれという催促かな?

 

「また、太ったな」

 

もう一度、私の目を見ながら言ってくれる?

 

 

うちのパートナーはガキ大将だ。人様にはとても紹介できないほどの暴言も吐く。もし、誰かが横で見ていたら「なんて、ひどい人だ」と私をかばう姿がハッキリと目に浮かぶ。

 

何も心配はいらない。

その人、素直じゃないだけなんで。

 

言葉だけをとれば、「精神的なDVか、貴様!」と詰め寄られても仕方がない。だが、行動を含めて眺めれば微笑ましい気分になる。

 

1日3回の食事を作ってくれて、おやつの時間もある。コーヒー党だが、紅茶も緑茶も出してくれる。私がすぐに発作を起こす貧弱体質なので、栄養バランスもバッチリだ。毎日、文章を書けているのはパートナーのおかげである。そして、太った原因の3割はパートナーである。人のお腹の肉をもみながら「もっと太ればいい」とか言い出す。張り倒したい。

 

私の記憶にはないが、朝の体調から察するに夜通し看病をしてくれる日もあるのだろ。69歳の心臓病持ちに、ここまでさせている。私は鬼と呼ばれても、「そのとおりですが、なにか?」と笑顔で受け入れるだけだ。いつも「あんたはずるい」とブチブチ文句を言われる。本当にかわいい人である。

 

料理の腕は、比べるまでもなく私よりパートナーが上だ。ちなみに父は寿司が最も得意で、ふぐの調理師免許も持っていた料理人だ。私はニコニコ「うまー」と言っているだけである。おかげで舌が肥えまくりである。

 

接客業や営業など、多くの人と接する職についていた。数多くの修羅場で、人の隠れた本性を見てきた。だからこそ、分かることがある。

 

口がきつい人は、いい人が多い。

ただの照れ屋さんである。

 

人を傷つけるだけの言葉を吐く人は違うので注意したい。この場合のきつい人は、相手に嫌われるとしても忠告するようなタイプだ。見たくない現実を突きつける人でもある。だから、一部の人に強烈に嫌われる。ハッキリと言うので、組織の変わり者と言われるような人だ。

 

10年以上、パートナーを観察していて心から思う。

口の悪さで損しているな、と。

 

もうちょっと言い方を変えれば、多くの人に理解されやすいだろうに。私よりも、パートナーは優しい人だ。けれども、警察に職質されるのはどんな時もパートナーだろう。

 

強面、サングラス、クマ体型のパートナーと童顔、黒縁眼鏡、ちんまり体型の私、見た目では勝負にすらならない。ここに低い声できつい口調が加わる。アニメ声で丁寧口調の私が負ける要素が欠片もない。はじめての店では、スタッフさんが毎回、私にまず話しかけるのも当然の結果である。

 

なお、中身は私の方がドス黒い。「あんたは思いつくことが悪辣すぎる」と、パートナーによく言われる。大人の悪意を一けた年齢ではじけた生き物の本性が白い。そんな物語のような美しい現実はない。ちなみに、高校生時代の愛読書には『孫氏の兵法』と『韓非子』が含まれている。パートナーは表が黒く中が白いおはぎで、私は表が白く中が黒い大福である。

 

人間は見た目では判断できないな。

パートナーの作ったご飯を食べるたびに実感する毎日だ。

体重計から目を背けながら。

 

 

苦い言葉を語る相手を、人は警戒する。

警戒すべきは、甘い言葉を吐く人なのに。

 

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