パートナーが素直じゃない
2020年8月9日 自宅
「そんな高いの頼まなくてもいい」
その言葉を表情が裏切っていた。
パートナーには日頃からお世話になっている。
という言葉では足りないほど、世話になりすぎている。看病というよりも、介護のレベルだ。自分の分の食費を渡しているとはいえ、食事の準備に片付け・掃除から荷物の受け取りまで丸投げである。住所が隣であることは、私にとっては幸運だったがパートナーにとっては悪夢だろう。会話の始まりはパートナーなのだが、声をかけた理由は『死にそうだったから』らしい。うん、当時を振り返ると欠片も否定ができない。
ちなみに、独り暮らしの体調不良で最も困ったのがゴミ出しだ。ゴミ出しだけは外出の必要がある。配達に来てくれた方に1,000円を渡して「ゴミを捨ててきてくれませんか?」とお願いしたくなる誘惑にかられた。実行したことはないが。
私の命はパートナーで保っている。
そう言い切れるほど、お世話になっている。なので、定期的にお礼をする。今回はお寿司にした。食べに行く体力はないので、出前の中で高めの商品を選んだ。お礼にはとても足りないが、これが私の精一杯である。いつもの出前のフリをして注文した。パートナーの大好物のお肉ではなく次点のお魚にした。いくらお礼でも、自分が現時点で食べられないものは選べない。パートナーの好みと自分の好みと体調の接点がお寿司だったのだ。
なぜ、自分を含めるのか?
パートナーは優しい。自分だけ味わうというのができないのだ。口では「俺だけ食べる」と言いながら、ラップをして冷蔵庫に私の分を残しておく。そういうツンデレじいちゃんなのだ。私が食べられないのに心から楽しめない性格なのだ。楽しめないお礼では意味がない。なので、自分の状況もお礼の条件に含んでいる。
「無理しなくてもいいのに」
ほら、やっぱり素直に喜ばない。
目じりが下がって、口角が上がり、声のトーンが高いので本音がバレバレだが。自身が着ぐるみかぶった表情隠しタイプなので、パートナーのような本音を隠せない素顔タイプを眺めているとほっこりした気分になる。強面の顔に可愛げのある行動なので、笑いもこみあげてくる。そうすると、「なんで、そんなに笑うんだ!」とプンスコする。余計に笑いが止まらなくなる。そして、禁止ワードの「カワイイね」と言うと「それは言うなって言っただろ」と怒り出す。そういう反応がカワイイと言われる原因なのに。
私、知っているのだよ。ネット上で20代の女性にカワイイとコメントされてしまったのを。匿名ですら、そういう反応をもらう。つまり、中身がカワイイということだ。漢らしいとか、カッコいいとか、そういうコメントばかりをもらう私とは大違いだ。性別や年齢なんて飾りなのだよ。
初見は『めっちゃ怖い』と思った私が、目を見て『大丈夫そう』、話して『とても良い人』、10年以上の付き合いでも『カワイイ』と心から思えるのだから。サングラスに帽子をかぶると『ヤのつく自由業』な印象を覆す中身なのだ。その見た目なのに、対面で10代の女の子に「カワイイ」と言われたのも覚えているのだよ。いい加減、認めればいいのに。からかうと面白いので、このままでも私は1ミリも困らないが。
日頃のお礼もできて、パートナーをからかうこともできた。
とても実り多い日だった。
第一印象は絶対ではない。
付き合いが長くなれば、
中身はどうしても浮き出てくる。
すべてを隠し通せるほど
世の中は甘くはない。
自己紹介でもある記事
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