不運は幸運の始まり
2020年1月29日 自宅
「そんなことに、なっていたの」
背筋がぞわっと寒くなった。
今の私は、お腹から流れる血が止まったばかりだ。ひとことで言うならば、絶不調である。だから、ニュースを詳しく調べる余裕なんてなかった。今日は少し意識がハッキリしたので、最近話題の新型コロナウイルスについて調べてみた。
えっ、なにこれ。
あまりの危険度に一瞬で頭が冷えた。これまでの修羅場人生で養った、命の危機センサーが警告音を鳴らしている。日本ではまだポヤポヤしているが、中国での被害をみると笑えない状況だ。今は中国のお正月シーズンだ。日本にも、中国からのお客さんがたくさん訪れている。もはや、日本は新型コロナウイルスの流行を避けられない。
そう考えた瞬間、気づいた。
自分の運の強さを。
年末年始は、大人数の集まりに参加する予定がいくつもあった。だが、妊娠がわかったのキャンセルした。その後、流産した。家から、ほとんど出られない身体になった。手術の予定だったが、その前に血などが流れたので中止になった。おかげで、大病院に通う予定も消えた。百人単位の人が集まる、試験もあきらめるハメになった。現在、スケジュール帳は真っ白である。
新型コロナウイルスに感染する確率が高い。そんな予定が、ことごとく潰されている。お腹に宿っていた子が守ってくれた。そんな風に思わざるをえないほど、完璧なガードだ。
私は免疫系の病気持ちだ。まだかかっていない風疹やはしか、おたふく風邪だけではない。インフルエンザや風邪をこじらすだけでも、命の危機がせまる身体だ。主治医からは「人混みを避け、うがい手洗いをマメに、マスクもつけて」など、普段から細かく指導されている。しかも、ぜんそく持ちで腎臓病で2回も入院経験がある。新型コロナウイルスに感染したら、助からない可能性が大である。
不運だと感じていた出来事が、私を守っていた。
幸運だとしか言いようはない。
みえない何かに祈りを捧げる。
私には、それしかできなかった。
苦しみに満ちた体験が、後に振り替えると幸運だったと気づく。そんな体験がこれまでの人生で数えきれないほどあった。今回の出来事は、これまでとは比べようがないほど落差が激しい。お腹の子は失ったが、自分の命は守られた。哀しめばいいのか、感謝すればいいのか、どうにもとらえようがない。だが、これだけは言える。
今回の不運は、幸運の別の顔だった。
私にできることは、この幸運を無駄にしないことだけだ。
不運は、背後に宝物を隠している。
だが、その宝物に気づける人は少ない。
e-hon(2020年6月10日、売切中)
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