注目される気はない
2020年9月4日 自宅
ひっそり、こっそり
景色の一部なのが好きだ。
私は地味だ。小柄・小太り・特徴のない顔、服装も穏やかな色が好き。街を歩いていても誰かが振り返ることはない。その他の枠にくぐられる一般人である。注目されないと周りの観察がしやすい。景色に埋没、大歓迎だ。
それなのに。
なぜか、顔を覚えられる。
どこかに出かけると、「この前は~」なんて声をかけられたりする。ビデオチャットですら、似たような展開になる。私には相手がどこの誰かもわからない。内心の焦りを笑顔で覆い隠し、相手の発言をキーワードに脳内を検索する。検索がヒットするまで気が気ではない。だいたい、私はどこに参加するときも基本ひとりでだ。休憩時間に周りがワイワイ、自分だけが一人ポツンでも気にならない。行った先で、気が合う人たちに出会った時だけワイワイする。名刺交換も、相手が出さない限りしない。顔を広める気も、知人を増やす気もまったくない。目立つ気なんて1ミリもない。
私の理想は黒子だ。現状、理想からは大外れしている。私は誰にも気づかれないマネキンがいいのだ。それとなく、なぜ覚えているか聞き出す。すると、「話が面白かった」「積極的に質問していた」「熱意がある」とか、私には理解できない応えが返ってくる。こちらからすれば、周りと同じように発言して、気になることがあったから尋ねただけである。時間と体力を無駄にしたくないので主催者の出版されている書籍を読むなどの下調べはするが、熱意を出した覚えはない。むしろ、これは。
「変人だから、頭に残った」
こうじゃないか。
つまり、口を開けば記憶に残る。
振り返れば、身に覚えがある。みんなと同じ衣装のスタッフ勤めの時も、お客さんに「いつもの人」と呼ばれたことはよくあった。いつも、という言葉が出る。これは、個人として覚えているという事だ。辞めた勤め先で、数か月ぶりに会う警備員さんに「元気にしているか」と雑談が始まったりする。お客さんの立場でも、たまにしか行かないのに常連扱いされてたりする。
特別な言動をした覚えはない。
それなのに、他者の反応と自分の評価のズレがひどい。
どう記憶を掘り起こしても、思っていることを口にしたものしか残っていない。暴言を吐いたわけでも、好かれようと誰かを褒め殺しにしたわけでも、周りを挑発したわけでもない。「変わっている」と言われ過ぎたので変人と認めたが。私としては、何が変わっているかよくわからない。どこが変なのか。わかれば対処のしようがあるが、つかめないので直しようがない。
生きてきて、知識と経験を得た。
それを素に伝えたいことを口から出す。
これ以外、何もしていない。
注目されるための本を参考までに読んだことがある。予想通り、私とは真逆なことが書いてあった。特徴的なアイテムを持つとか、積極的に周りに声をかけるだとか、身だしなみに少しも気を抜かないだとか、流行の話題をつかんでおくとか、感情表現を激しくするだとか、どれも私は実行した覚えはない。
大きめな会の時は黒スーツに黒カバン、お化粧は口紅とファンデーションぐらい、目が悪いので座る場所は前の方が多いが、表情は抑えめ笑顔で淡々とした口調、声を荒げたりすることはまずない。体力がなく面倒くさがりなので、自分から声かけなんてしない。お世話になった人を見かけたり、どこかで会話が盛り上がった相手には自分から向かうが。尋ねたいことがない限り、知らない人は対象外だ。流行? よくTVに出演するような、有名人の名前すら知りません。アニメも好きなもの以外はわかりません。流行よりも自分の興味、昔から少しも変わっていない。
もしかしたら、目立つ気がない言動が逆に目立ってしまうのか。白だらけの中に黒がひょっこりあれば目を引くように。キラキラドレスや着物にブランドスーツだらけの中に地味スーツが一人ブラブラしているのがダメなのか。だからと言って、注目されたい言動は面倒だ。写真を撮ってください、お話してください系の憧れ思考も私にはない。芸能人が近所に撮影に来ても、「行っておいでよ」と一人で店に残った。そういうタイプなのだ。
注目される。
注目されない。
いったい、どこで決まっているんだ。
謎は深まるばかりだ。
自己評価と他者評価はズレる。
ズレの差に違いはあれども、一致することはない。
自己紹介でもある記事
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